我が家の玄関前では釣り名人さんと父が私の到着を待っていた。
「遅くなりすみません。」と言ったあと引き渡しがはじまった。
引き渡しといっても紅白の垂れ幕にお祝いの祝辞…などという格式ばった式典では
まったくない。「我が家の鍵を受け取る」というとても単純でとても簡単なものであ
る。時間にすれば約1分で終了する。しかし、施主はこの瞬間を楽しみに長いこと
待っているのである。
じゅんぺい親子も同じだった。今まで毎日通った工事中の我が家。その目的は今日、
この時のためだった。
まずは工事用の鍵と正式な鍵を前に釣り名人さんから説明があった。聞いた内容は昨
夜、新米指揮官さんから聞いたことと同じだった。
「まず工事用の鍵で…」と釣り名人さんから工事用の鍵を渡された。いつものように
我が家の玄関は開いた。そして次に正式な我が家の鍵が渡された。
いよいよ我が家の封印が解かれる瞬間である。
鍵を差込み、そして鍵を回す。
「カチャ」
「カチャ」という音とともに我が家の封印が解かれた。
玄関の鍵は問題なく開いた。そして再度、鍵を閉め、さっき開けた工事用の鍵を使っ
てみる。鍵を差し込み、回してみると…。
あれ?回らない。
もう工事用の鍵でこの玄関の鍵を開けることはできなかった。
引渡しは無事に完了した。
我が家の工事期間中、ずっとお世話になった工事用の鍵。記念にほしいと釣り名人さ
んにお願いをした。釣り名人さんは「使い道はないですよ。」と言いながら工事用の
鍵を差し出した。
じゅんぺいのキーホールダーには工事用の鍵と我が家の鍵が仲良くついている。
